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かつや対沖縄セルラー電話・判決文

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かつや対沖縄セルラー電話・判決文

令和3年6月3日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 印
令和3年(ワ)第440号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結時 令和3年4月13日

判        決
東京都渋谷区〇〇町〇〇番〇号 〇〇〇▽▽山〇〇〇〇
 原    告      福永活也
那覇市松山1丁目2番1号
 被    告      沖縄セルラー電話株式会社
 同代表者代表取締役   湯淺英雄
 同訴訟代理人弁護士   赤嶺真也
 同           松永浩一

主   文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ
2 被告は、原告に対し、10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(令和3年1月22日)から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、原告が、インターネット条の投稿によって権利を侵害され、被告において当該投稿に係る発信者情報を保有しているとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、上記発信者情報の開示を求めるとともに、原告が裁判外でした同情報の開示請求を被告が拒んだことにより精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、慰謝料10万円及びこれに対する不法行為の後の日である令和3年1月22日(訴状到達日の翌日)から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案てある。
1 前提事実(争いがないか掲記の証拠等により容易に認められる事実。証拠は枝番号を含む。)
(1) 当事者
ア 原告は東京弁護士会に所属する弁護士である。
イ 被告は電気通信事業等を営む株式会社である。
(2) 本件に至る経緯等
ア 原告は、令和元年8月頃、自らのツイッター上に写真(参加者を集めてゲームをする様子が写されたもので、参加者の衣服の胸付近には名札の代わりとなるガムテープが貼られている。)を掲載したところ、以後、SNS上などにおいて、原告を「ガム弁」(ガムテープ弁護士」の略称)などと呼称する者が出現するようになった。(甲8、9、弁論の全趣旨)
イ 原告は、令和2年8月6日、ツイッターに、「出張をしていたところ、仲良くなった男子大学生が終電を逃したので、自らの宿泊先のツインルームに泊まってもらった」との内容の投稿をした。(甲10)
ウ 上記イの投稿を見るなどした氏名不詳者(以下、「本件発信者」という。)は、同9日、ツイッター上に別紙投稿記事目録記載の投稿(以下「本件投稿」という。)をし、これを不特定多数の閲覧に供した。(甲6。弁論の全趣旨)
(3) 開示関係役務提供者該当性
 被告は、本件投稿に係る法4条1項所定の開示関係役務提供者に該当する。(甲11、12、弁論の全趣旨)
(4) 本件訴訟の目的等
 原告は、本件投稿に関し、本件発信者に対して不法行為に基づく損害賠償請求等を行うことを予定している。(弁論の全趣旨)
(5) 被告による開示請求の拒否等
 原告は、令和2年9月21日頃、被告に対し、本件投稿における「彼をぶち●してしまいそうで自分が怖い」との記載部分(以下、「本件記載部分」という。)により名誉感情が侵害されたとして、本件発信者に係る発信者情報につき、裁判外で開示請求をしたところ(以下、「本件開示請求」という。)、被告は、同年12月2日頃、原告に対し、本件投稿によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるとは判断できないとの理由により、本件開示請求を拒否する旨の連絡をした。(甲13、弁論の全趣旨)

2 争点
(1) 権利侵害の明白性(争点(1))
(2) 本件開示請求を拒否したことが不法行為を構成するか(争点(2))
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1) (権利侵害の明白性)について
 (原告の主張)
 本件投稿における原告の呼称である「ガム弁」とは「ガムテープ弁護士」の略称であるところ、当該呼称は、相手の職業というその人のアイデンティティの根幹ともなる要素に対して、無機質なガムテープという物資を用いて揶揄したあだ名を一方的につけ、さらに略して侮辱することで嘲笑しているものと理解できる。
 また、そもそもガムテープ弁護士という呼称が生じた経緯は前提事実(2)アのとおりと思われるところ、同項記載の写真を題材に一方的に侮辱することは、原告の人格や価値観を一方的に否定して、発信者の価値観や生活様式を押し付けるものである。このように、ガム弁という侮辱は、短い単語であり、かつ子どもじみた悪口ではあるものの、本件発信者による原告への人格軽視の態度が読み取れる。
 そのうえで、本件発信者は、一方的に自分の娘が原告とツインルームで宿泊するという架空の設定を述べたうえで、「ぶち●してしまいそうで自分が怖い」(本件記載部分)などと投稿しており、、上記のとおりの侮辱の態度や全体として唐突に原告をけなそうとする敵意が見られること、かつ、1文字の「●」を伏字として利用して「ぶち●して」と記載していることからすれば、本件記載部分は、「ぶち殺してしまいそう」との脅迫的な言動を交えて強い侮辱表現をしたものと評価できる。
 以上からすれば、原告の死をも意味し、その身体に危害を加えることを示唆する言及となっている本件記載部分は、社会通念上許容すべき限度を超えた著しい侮辱であるといえ、原告の人格権としての名誉感情を侵害することは明らかである。
(被告の主張)
 本件記載部分が原告に対する違法な侮辱となるとの原告の主張は争う。

(2) 争点(2) (本件開示請求拒否したことが不法行為を構成するか)について
(原告の主張)
被告は、上記(1)の原告の主張のとおり本件記載部分が原告を著しく侮辱するものであることが一見にして明白であるにもかかわらず原告からの開示請求を拒否したのであるから、原告に対して不法行為責任を負う。
(被告の主張)
 本件投稿の文言自体から本件記載部分が社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見して明白であるということはできず、本件開示請求を拒否した被告において重大な過失はないから、不法行為による損害賠償責任を負うものではない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1) (権利侵害の明白性)について
(1) 本件投稿は、その文脈等に照らすと、全体として、もうすぐ高校生になる年頃の娘を持つ父親である本件発信者が、娘が有名芸能人と外泊をしたら「一蹴」(「一喝」の意味とも解される。)する程度で済むかも知れないが、その相手が「ガム弁さん」こと原告であれば、原告をぶち殺してしまうそうで自分が怖いとの投稿をしたものと解される。父親として、どのような経緯であれ、高校入学前の年頃の娘が男性とホテルに宿泊した場合に、当該男性に対して否定的な感情を抱くのはごく自然なことといえるのであり、本件掲載部分は、有名芸能人に比して原告が劣った存在であるかのような意味内容に受け取ることが可能という点において侮辱的な要素が含まれているということもできるものの、それ自体が穏当さを欠く表現であることや本件投稿名中に「ガム弁」といった原告を揶揄する侮辱的な呼称が用いられていることを考慮したとしても、これが社会通念上許される限度を超えて原告を侮辱するものとは認め難い。
 原告は、本件記載部分が原告の死をも意味し、その身体に危害を加えることを示唆する言及となっていることを理由として違法な侮辱であるかのような主張をするが、生命や身体に危害を加える旨を示唆するかのような表現をすること自体が侮辱に当たるとは解し難く、本件全証拠によっても上記主張に理由があるものと解すべき事情の存在は認められない。
(2) 以上の次第であり、本件記載部分が原告の権利を侵害するとは認められず本件発信者に係る発信者情報の開示を求める原告の請求は理由がない。
2 争点(2) (本件開示請求を拒否したことが不法行為を構成するか)について
 原告は本件開示請求を拒否した被告の行為につき不法行為が成立すると主張するが、当該主張に理由がないことは上記1で説示したところから明らかである。

第4 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

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